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下手の横好き、でも信じる

仲村 美涼
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先日、RBCアナウンサーが朗読の表現を学ぶ講習会がありました

講師は声優の矢島晶子さん!クレヨンしんちゃんの

野原しんのすけ役をされていた方です。

事前に指定の原稿が手渡され、

それをアナウンサー陣が朗読して矢島さんに講評をもらう、という

「え?!あの矢島さんの前で朗読を?!」

と、かなり緊張する講習会だったのですが(笑)

矢島さんはとても楽しく朗読を聞いている様子で

かつ的確な指摘や効果的な練習法を教えてくださいました

すべての瞬間に学びがある講習会でした!楽しかったー!

それにしても、表現の世界ってどれだけ奥が深いんでしょう

自分では、限界まで頑張って読み込んで表現しているつもりでも

あとから確認してみると全然できていないんですよね

朗読を収録して、これは会心の出来だぞー!

とムフムフしながらチェックすると

なんか思ってたのと違う…全然棒読みじゃん……

と落ち込むことが本当に多い

作品を好きであればあるほど、できない自分が腹立たしくなります

でも、最近朗読でうれしかったこともあります

RBCアナウンサーが持ち回りで朗読をお届けするラジオ番組

「ひとり語りシアター」で

私は自分の担当週で、太宰治の『津軽』に挑戦しました

『津軽』は、太宰が自分の生まれ育った津軽地域を周遊する紀行文的小説で

友人知人との思い出の場所をめぐり、旅の最後には30年近く疎遠になっていた

育ての母である越野タケさんと再会するストーリーです

この再開のシーンが大好きで、朗読してみたいなーと長年思っていましたが

やはり津軽の方の言葉を語るなら、津軽弁抜きというわけにはいきません

津軽弁話者の方とどうにか出会えないか…

と思ってなかなかチャレンジできませんでした

しかしある日、ふと倫太郎さんにお知り合いの方がいないかと聞いてみたところ

なんと、育ての母である越野タケさんの遠い親戚の方をご紹介していただきました

(なんという人脈の広さ…!)

話はとんとん拍子で進み、その方に電話で津軽弁の指導をしていただき

録音してスマホに取り込んで

移動中や家事をしているときなどはずーっと聞いて

練習をしては再度電話をして津軽弁を聞いてもらい

修正をしながら練習をしていました

不思議なことに何度も津軽弁を口にしていると

アクセントやイントネーションといった表現の技術に注力する気持ちではなく

タケさんの表情やしぐさ、肉感、太宰(文中では修治)との距離感のむず痒い感情が

頭の中で自然に、鮮やかに浮かび上がってきました

こうした感覚になれることは初めてのことでした

津軽弁話者の生きた言葉を使っているからなのか

タケさんのお知り合いから詳しい話を聞けたからなのか

何回も読んで理解が深まっていたからなのか分かりませんが

さまざまな要因が作用してその世界に

連れて行ってもらったのかなーと思っています

収録中も楽しくて、グッとその世界にのめりこんで朗読できたような気がします

放送音源を聞くと、やっぱり表現の甘いところはあるし

満足のいかない部分はありましたが

得られたものが大きいチャレンジになりました

また、津軽弁を指導してくださった方や東北地方出身のリスナーから

「違和感のない津軽弁だったよ!」という言葉もいただきとても嬉しかったです

ところで、アナウンサーへの朗読講習会で矢島さんは

「とにかく登場人物の感情を想像すること!その気持ちがそのまま声に乗る!」

とおっしゃっていました

これって、つまり表現というのはセンスとか特殊な技術がすべてなのではなく

想像力を膨らませる筋力をつけるのが上達するための必要なもののひとつで、

それはきっと鍛錬を続けることで身につく揺るがない力なんだと思います

私にとって朗読やナレーションは「下手の横好き」なのですが

でもこれが自分の一番好きなことで、向いてる事だって信じたいなと

思う出来事でした

仲村

仲村 美涼
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